(7.7報告④)まやかし「加憲」も「改憲」も、どっちも危ない!-24条が安倍政権と改憲右派に狙われる理由

7月7日に行った集会の報告もこれで最後です。24条改悪の動きと道徳、家庭教育支援法案についての動向報告と質疑応答部分をアップします。

 

24条と道徳、家庭教育支援法案について(キャンペーン事務局から

 「道徳」は、これまで週に1回、「道徳の時間」などでやってきたものですが、2018年度から小学校で、2019年度から中学校で、教科書を使って教え、採点もされる「教科」の1つになります。
 日本では敗戦後、「修身」の停止、「教育勅語」の排除・失効決議を経て、1947年に日本国憲法とともに教育基本法が施行となり、教育の民主化が始まります。その後起こった「逆コース」の流れの中で、戦後民主教育への攻撃、道徳の教科化への圧力もありましたが、子どもたちの道徳心は教科ではなく学校教育全体の中で育むんだということで、58年に「道徳の時間」が作られました。しかしその後90年代後半から、同法見直しの動きが高まり、2006年の教育基本法改悪を経て、2015年の学習指導要領一部改定により、道徳は教科化されたのです。

 そしてこの3月、2020年度以降に使う新しい学習指導要領が出ました。10年ごとに改訂されるものですが、今回の学習指導要領は、安倍政権が06年に改悪した新・教育基本法の内容が十分に反映されたものとなっています。
 来年度から小学校で使われる道徳教科書の検定結果が、やはり3月に出ました。検定対象となった66冊に合計で244件の検定意見がつきました。「パン屋さんを和菓子屋さんに」などの意見がついて話題になりましたが、一冊あたりの検定意見は3.7件。これは異例の少なさだそうですが、文科省がつくった『私たちの道徳』や『小学校道徳読み物資料集』を参考にし、各社横並びで”忖度”した結果だと言われています。たとえば、「かぼちゃのつる」という題材は「わがままな振る舞いは抑える」という徳目として、すべての教科書に掲載されている、というような画一化が起きています。

 改悪された新・教育基本法には、「家庭教育の重要性」が明記されました(第10条)。これにもとづいていくつかの自治体で「家庭教育支援条例」が制定されており、自民党は法案を上程しようと準備しています(昨年秋の素案はこちら)。
 その実施として、たとえば家庭で話したことをレポートにして学校に提出する、など保護者に宿題を出す例が挙げられていて、学校や国などが、家庭に踏み込んで指導、介入しようとする動きが広まることが懸念されます。
 このように、「教育改革」は、子どもだけでなく、家庭や地域=すべての「国民」を巻き込む形で進められようとしています。それは、あるべき「国民」を育成するために、あるべき家族像を規定し、国家権力が望む方向に人々の「生」そのものを誘導していこうとしていく動きではないでしょうか。

 そういう意味で、24条の改悪反対、ということと同時に、この道徳教科化や家庭教育支援法案を含む、私たちの尊厳や生き方を奪うあらゆる動きに対して、きちんと分析し、批判し、抵抗していく必要があると考えています。

 

質疑応答

Q「個別的自衛権は必要だと認めるが集団的自衛権は違憲だ」という1972年の政府見解がありますが、清末さんはどう考えますか。

A 憲法学上の通説に基づけば、これまでの政府見解がどうかという以前に、憲法9条1項2項の解釈は、自衛隊は戦力以外のなにものでもなく、「軍隊」だということ。つまり、集団的自衛権以前の問題だと思います。私は9条を現実的な平和主義という観点から評価しているし、私の立場は、9条1項は戦争や、武力行使、武力による威嚇を全面的に放棄し、戦力に関しても全面的に禁止しており、武力に基づく自衛権を、個別的・集団的に関わらず一切認めない、というもの。少数派の意見ではありますが、これが最も現実的な平和を生み出すものと、私は考えています。(清末)

Q スピリチュアル系と右派のジェンダー観は親和性が高いと思いますが、どう考えますか。

A 右派団体である日本会議にはさまざまな宗教団体が関わっていますが、それらの団体にはある程度共通する価値観があります。とくに、ジェンダー観、家族に関する考え方は共通する点が多く、それが24条を共通の改憲項目としてあげていることにつながっていると思います。 スピリチュアル系にも、そうした宗教的な団体に共通するものと近い価値観を持っている人たちもいるのではないかと思います。(山口)

Q 緊急事態条項が長期政権を招くというプロセスについて、もう少し説明を聞きたいのですが。

A 緊急事態条項が実際に効力を発するときというのは緊急事態宣言がなされたとき。宣言がなされていることを理由に選挙を引き伸ばし、議員の任期を引き伸ばすことによって長期政権の維持が可能になります。その期間には、第二、第三の改憲の発議が可能になるのではないでしょうか。そういう意味で、今回の明文改憲と緊急事態条項の新設は彼らのなかでは一体化したものなのではないかと思っています。(清末)

Q 家庭教育支援法案の関連の話をもっと聞きたいのですが。

A 家庭教育支援関係の先進県である埼玉県庁に取材に行きました。埼玉県は、熱心に家庭教育に関連する取り組みをやっている県です。例えば、学校入学前に子どもたちは健康診断を受けますが、その時間を使って親には「親の学び」という講座を受けさせているということです。また、子どもたちには授業などで「親になるための学び」を受けさせる。こうしたものを受けたい人が受けるのではなく、全員が受けねばならない、ということになると問題も出てくるのではないでしょうか。また、熊本県を皮切りに家庭教育支援条例が成立している県や市町村も多数出てきているので、そうした自治体は条例のもとで家庭教育に熱心に取り組んでいるようです。 このように、家庭教育について先進的試みをしているとされる自治体での取り組みの事例は、家庭教育支援法が通った場合にどういう施策が行われていくかの参考になると思います。(山口)

Q 24条改憲を危惧していても、「家庭や家族は大切だ」と言われると反対しにくいものです。「家族は大切でしょう」とか「あなたは気にしすぎでは?」と無邪気に言う人たちに対して、この状況をわかりやすく伝えていくにはどうしたらいいでしょうか。

A1 PTAなど地域で活動している人たちに、「3世代同居がいい形だ」と政府が推奨する動きがあることを話すと、「ひとり親など、事情もありながらいきいき暮らしている人たちがいるなかで、それは良くない」、と言う人が多いんですね。選択的夫婦別姓についても、「認められないのはおかしい」と言う。私は政治家や右派運動の人よりも、そうした一般の人たちを信用しているんです。話せば伝わるので、臆せずに発信していくことが大事なのではないでしょうか。(打越)

A2 一番有効なのは、家族が大切なら25条に基づく社会保障をもっともっとやれ、と主張することだと思っています。25条が死文化している深刻な状況がありますので、なおさら25条を強調することが重要です。24条は当事者主義に基づいて、さまざまな家族のありかたを可能とする条文です。そうしたさまざまな家族のニーズにあわせた支援を、25条に基づく社会保障の下でやることが求められています。。家族が大事というなら、その方がよっぽど建設的だと思います。(清末)

A3 日本政策研究センターが自民党案を批判してまで24条の「加憲」を主張し始めたのは、やはり自民党案では反発がくることがわかっているからだろうと思います。ただ、24条を現実的に改憲項目にあげた場合、どれほど女性からの反発があるのかは、右派の人たちも読めていないのではないでしょうか。同時に、それにもかかわらず未だに家族のあり方を改憲項目の優先事項としているのは、右派の人たちの家族保護というものへのこだわりが相当強いということでもあると思います。

家庭教育支援関連については、批判するのは難しいところもありますね。でも、先の埼玉の例のように、現実的に何が行なわれているのかをまずは知り、問題点があるのであれば、それを見極めて具体的に指摘していくこと、それが重要ではないかと思います。(山口)

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