資料 家庭教育支援法案の問題点_24条キャンペーン作成

1月29日に衆議院第2議員会館で行なった院内集会で配布した、家庭教育支援法案の問題点を整理したもの(ポイント要約とQ&A)をアップします。以下のリンクからPDFをダウンロードしてご活用ください。

家庭教育支援法案の問題点

家庭教育支援法案_ポイント要約

Q1 家庭教育支援法案(仮称・修正自民党案)はどんなものか?

“家族の人数や家族の時間が減って、地域とのつながりも薄くなったから、「家庭教育」を「支援」することが緊要な課題”とした上で、改正教育基本法の精神にのっとり、家庭教育支援に関する施策を推進するもの。

基本理念には「父母その他の保護者の第一義的責任において」「保護者が子に生活のために必要な習慣を身に付けさせる」、「子育ての意義について理解が深められ、子育てに伴う喜びを実感できるように配慮しておこなわなければならない」とし、それらの支援は「国、地方公共団体、学校、保育所、地域住民、事業者その他の関係者の連携の下に、社会全体の取組として行われなければならない」とある。(修正自民党案は17年2月朝日新聞の報道より)

 

Q2 どういう経緯で出てきたものか?

2006年に教育基本法改定、「家庭教育」に関する条文(10条)が新設されたのが近年の法制化への契機。2012年「家庭教育支援議員連盟」(いわゆる親学推進議員連盟)が、安倍晋三議員を会長に超党派で発足。同年中の法制定を目指した。同年には地方自治体の一部で「家庭教育支援条例」制定の動きも始まる。2014年〜自民党青少年健全育成推進調査会に設置のPTで法案を検討中。

教育基本法改訂と同様、国家による人びとの指導・管理を強化する流れの一環と見られる。遡ると、1980年代の臨教審から、家庭教育を教育行政に導入する動きがあり、以来現在に至るまで、この法制化の動きは、右派人脈や団体との関わりが深い。

 

Q3 なにが問題か?

  • 国家や地方自治体、学校、地域住民などが問題のない家庭にも介入するのを許す
  • 地域住民の介入奨励はプライバシー侵害や「監視」社会の強化につながるおそれも
  • 「家族の絆」の強調は、貧困、虐待に悩む子どもには逆効果になりかねない
  • 問題を抱えている場合も「保護者の責任」と自助を求められ公的支援が後退
  • 家庭教育の自主性」という文言が削除されたことに象徴されるように、国家(地方自治体など)にとって望ましい家族像、家族内秩序やジェンダー役割、伝統や愛国心などが推奨され、その方向へ向けての「指導」がなされる恐れ
  • 子どもの権利条約(日本も批准)の本質にもとる

→憲法13条の個人の尊重、憲法19条の思想、良心の自由、憲法24条の家族の中での個人の尊厳や両性の平等、などに反する

 

家庭教育支援法案Q&A

Q 法案の経緯をザックリ説明すると?

A 2006年、第一次安倍政権下で教育基本法が改定されたとき、同法に「家庭教育」に関する条文が新設されました。

2012年に、家庭教育支援議員連盟(通称「親学推進議員連盟」)が、安倍晋三議員を会長に発足するなど、法案制定への機運が高まりました。そして同年ごろから各地の地方自治体でも、「家庭教育支援条例」の制定の動きが始まりました。

2014年から自民党青少年健全育成推進調査会に設置したPTで法案を検討中です。

改正教育基本法と同様、国家による人びとの指導管理を強化する流れの一環とみられるこの法制化の動きは、右派人脈、団体とのかかわりが深いと指摘されています。

 

Q 「家庭教育支援法案」ってどんな内容ですか?

A 自民党が準備している「家庭教育支援法案」によると、”家族の人数や家族の時間が減って、地域とのつながりも薄くなったから、「家庭教育」を「支援」することが緊要な課題”とした上で、改正教育基本法の精神にのっとり、家庭教育支援に関する施策を推進するもの、ということです。

その「基本理念」には、「父母その他の保護者の第一義的責任において」「保護者が子に生活のために必要な習慣を身に付けさせる」、支援が「子育ての意義について理解が深められ、子育てに伴う喜びが実感できるように配慮して行われなければならない」とし、それらの支援は、「国、地方公共団体、学校や保育所、地域住民、事業者その他の関係者の連携のもとに社会全体の取組みとして行わなければならない」としています。また、国には、どのように支援するかを定める「基本方針」を作るよう義務付けています(地方公共団体は努力義務)。

 

Q 何が問題なのですか?

A 家庭や私的領域に国家が介入しようという意図が見えます。

まず、この法案ができると、国家や地方公共団体から学校、保育所、地域住民までが、すべての家庭の子育てに介入することが可能になりかねません。保護者への「教育」も奨励されます。その内容を決めるのは国や地方公共団体であり、家族が自由に判断すべき子育ての内容を国や地方公共団体が一律に方向付けよ、と言うことになりかねません。そもそも家庭教育の目的やあり方は、国が法律で定めるべきものなのでしょうか。

「家庭教育支援」が保護者や地域の人々の「努力義務」となるこの法案には、家庭教育に家庭以外の国や地方公共団体、学校、保育所、いろいろな人たちが連携してとりくむことが定められています。私的領域の家族のプライバシーはどうなるのかが心配されますし、監視社会が強まることはないか、も懸念されます。戦前の隣組を髣髴とさせるとの指摘もあります。

また、素案にはあった「家庭教育の自主性を尊重」という文言が、2017年の法案改定ではなくなりました。自主性すら尊重されず、介入が奨励されるというのは一層恐ろしいこと。この法案の成立には、右派が牽引する教育運動が密に関わっています。こうした右派の主張は、家庭内の男女の役割を強調したり、国を賛美し、国家の一員としての教育を推進するもの。個人の尊厳や男女の平等などをうたう現憲法を批判し、改憲に意欲を燃やす勢力と幹部が共通するなど、その立ち位置が非常に近いことが懸念されています。

実際に、2016年10月の本法案の自民党案では、家族を「社会の基礎的な集団」と位置づけ、家庭教育の理念を「子に国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるように」と規定していました。2017年の案ではこの項が削除されていますが、この、家族を社会の基礎的な集団と位置付けるという考え方は、自民党の改憲草案24条部分と同じ発想であり、「個人より家族、そして国、を尊重する生き方」へと国民を誘導する意図が感じられます。そこは非常に警戒したいところです。

憲法でいえば、憲法13条の個人の尊重、憲法19条の思想、良心の自由、憲法24条の家族の中での個人の尊厳や両性の平等、などに抵触する法案といえるでしょう。

 

Q 国連で採択された「子どもの権利条約」(日本も批准)にもとるのはどの点で?

A 子どもの権利条約において子どもは「社会の中で個人としての生活を送れるように育てられるべきである」とされ、独立した人格としてその尊厳を尊重・確保すべきとされています。日本も同条約を批准していますが、この法案は、当初の案にあったように、子どもを個人として成長発達するのを支えるのではなく「国家・社会の形成者として」枠付けようとしています。

また、子どもの権利条約は親に子どもの発達・養育に関する第一義的な責任を有するとしていますが(18条1項)、その基本的関心事項は「子どもの最善の利益」であって、「国家・社会の形成者として必要な資質」ではありません。

 

Q 児童虐待や貧困の場合など、家庭に地域や国家の介入が必要な場合もあるのでは?

A 児童虐待の事例で,被虐待児の保護のために社会権の一環として公権力が家庭に介入する必要がある場合もあります。そのための法整備が必要ならば、「児童虐待防止法」の拡充などで、それをすべきでしょう。

家庭教育支援法案の場合の介入は、それとは別の意味を持つものです。介入する対象は、虐待の有無にかかわらず「すべての家庭」「日常の子育て」です。公権力が、法の名の下で「支援」と称して日常的に家族に介入し、公権力にとって望ましい家族像や家庭教育のあり方を指導することが可能になるものです。

また、貧困や児童虐待の被害で苦しんでいる子どもたちにとっては、「親を大切に」「家族の絆は大切」などと強調されることは、逆効果になりかねないと懸念されています。また、実際に支援が必要な場合も、「保護者の責任」と自助を求めることになりかねず、公的支援が後退するおそれもあります。

 

Q 「家庭教育支援法案」の根拠は?

A  2006年、安倍政権下で教育の憲法といわれる「教育基本法」が改訂され、「家庭教育」にかんする条文が新設されました。これが根拠とされています。(以下、同法条文)

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第10条(家庭教育)

1 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。

2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

 

Q 自治体の「家庭教育支援条例」の現状、そして法案との関係は?

A 先に採択された自治体の条例を参考にして法律が作られることは時々あります。(最近だと「空き家対策特措法」)

家庭教育支援法案も同じ流れのようで、2017年末で確認できたところでは、熊本県など8県(鹿児島県、静岡県、岐阜県、徳島県、宮崎県、群馬県、茨城県)、石川県加賀市など5市(長野県千曲市、和歌山県和歌山市、鹿児島県南九州市、愛知県豊橋市。)において、家庭教育支援条例が制定されています。(大阪市では、2012年に条例案が大阪維新の会より提出されたが、批判をうけて撤回。)自民党が用意している法案とこれらの自治体の条例を見比べると、多少の違いはあるもものの、中身はそっくりです。

全国初の家庭教育支援条例を制定したのは熊本県でした(2012年12月)。「家庭は教育の原点であり、すべての教育出発点」「少子化や核家族化の進行、地域のつながりの希薄化などによる家庭の教育力の低下」という前提があり、条例の中身は以下のようになっています。

  • 保護者が家庭教育に第一義的責任があるとし、その役割を自覚、認識するとともに保護者自身も成長していくよう努める
  • 家庭教育に関して、県の責務を定め、市町村との連携、保護者、学校等、地域、事業者の役割を定める
  • 親としての学びを支援する学習機会の提供、親になるための学びの推進、人材育成、 広報及び啓発などを行う

家庭教育に関して、県の責務、市町村との連携を定めるほかに、保護者や学校と地域事業者の役割も定めていますが、県によって、例えば茨城県や群馬県などでは、保護者に加えて、祖父母の役割まで記述しているところもあります。

条例のある自治体はもちろんのこと、家庭教育支援条例がなくても、家庭教育支援の取り組みに熱心な自治体もあります。

 

Q 自治体の「家庭教育支援」においての問題の具体例はありますか?

A そもそも前提となっている「家庭の教育力」は本当に「低下」したのか、本当に昔は家庭の教育力は高かったのか、の検証がされていません。そして、各家庭が家庭教育に対する「責任を自覚」して「役割を認識」することをうたっていますが、それは法律や条例で定められるようなことなのでしょうか。

実際に、「親学」「親の学び」「親の学習」などの名称で、親のため、あるいは子どもや若者向けの「親になるため」の講座の開催、家庭教育冊子の作成・配布、家庭教育アドバイザー制度の創設、「早寝早起き朝ごはん」啓発、企業との連携、などが進んでいます。就学時健診などの機会を捉え、保護者向けに「家庭教育支援」の必要性を説くような講座が開かれたり、学校での「親になるための講座」が開かれるところもあります。

それらすべてが「家庭教育支援」の施策として全て問題というわけではありませんが、見逃せない問題もあります。

例えば、「親のための講座」や「親になるための講座」の中には役立つ内容も含まれてはいますが、性的指向や性自認の多様なあり方や、ひとり親家庭の存在を考慮に入れた内容ではないなど、問題もあります。こうした講座が学校で行われる場合、希望しない人たちも受講せざるをえない場合があります。これらの内容がどの程度妥当で、誤りがないかが主に自治体の判断に任せられたまま行われることも問題です。

自治体が「早寝早起き朝ごはん」など意識啓発中心の施策を行うことが、個々の地域住民が実際に抱える困難とずれているという場合もあります。

また自治体ではないですが、国会の「家庭教育支援議連」が発足してまもなくの2012年、「発達障害は子育てで防げる」という科学的に誤った内容の勉強会を行ったことがわかり、当事者団体などからの抗議を受けて謝罪したという事件も起こっています。

また、多くの自治体が家庭教育の冊子を作っていますが、妊娠、出産が前提となったライフプランだけが推奨されたり、思春期になると「誰もが」「異性」に興味を持つと記載されているなど、多様な生き方を認めない内容になっているのも問題です。「早く結婚して産めよ増やせよ」、という内容が露骨に打ち出されている場合もあり、個人の尊重や、性の自己決定権(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)の観点からも問題です。

以上

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