(集会報告③)「不穏なトランプ効果―加速化する改憲と24条の危機」 指定発言者

2017年1月6日に開催した「不穏なトランプ効果―加速化する改憲と24条の危機」。報告の3回目は、米津知子さん、永山聡子さん、清水晶子さんの発言です。

米津知子さん:

トランプ政権が、リプロダクティブ・ヘルス/ライツを後退させるということを心配しています。ブッシュ(子)大統領だった時期にも同じようなことが起きました。税金を中絶に使わせないといって、国内外への支援金を制限したんです。

日本の右派がそれに共鳴し、2002年には日本でも中学生向けの性教育の教材が絶版回収になるなど、性教育・ジェンダーフリーバッシングがおきました。

その中で、都立の七生養護学校では知的障害のある子たちに性教育をしていた先生たちが処分をされました。この処分には、「障害を持つ人たちに性と生殖なんてありえない、性教育なんて要らない」という思い込みが根底にあると思っています。

日本では、戦前・戦中は人口増加政策がとられましたが、戦後の混乱期には突然、優生保護法で中絶してよい条件がつくられました。その後70年代には再び将来の労働力確保のために子どもを増やそうとする。そして優生保護法から経済条項の削除が提案されましたが、反対運動によって削除はされないまま母体保護法に改定されて今に至ります。

今では、世界的に、リプロダクティブ・ヘルス/ライツが提唱されるようになりました。しかし日本では、実質的には子どもを増やすためのさまざまな政策が、必ず「結婚」と結び付けて行われています。障害者、そして性的マイノリティの人たちといった、「結婚」「生殖」という枠に入るはずがないといわれている人たちは、そこに含まれません。人口政策は必ず、優生政策と一緒に行われると思いますが、その一番はっきりとした形は「優生保護法」です。このことは、障害者の排除だとして、障害者の問題と理解されていますが、私は、これはむしろ女性の問題だと考えています。

リプロダクティブ・ヘルス/ライツは、「産む・産まないどちらの意思も尊重され、生まれてくる子どもは障害の有無にかかわらず歓迎されて育てられる、だから安心して産む産まないを女性が決められる」ということ。それを阻害しているのが優生政策です。「障害者を助ける」ということではなく、女性自身の問題として、優生政策・人口政策を、ともにさせないというように頑張っていきたいです。

 

永山聡子さん:

外国籍の問題と憲法24条について話したいと思います。

日本国憲法は、すべての人々を包括するという理念のもとにつくられています。「すべて」なのだから当然、日本に住む外国籍者も憲法の傘の下で生きています。

現在、日本で日本国籍者を持たない人々は、だいたい223万人。そのうち一番多いのは中国国籍を持つ人、次が韓国・朝鮮籍を持つ人です。その次はフィリピン、ブラジル、ネパール、アメリカ、台湾、ペルー、タイとなっています。

24条において外国籍に関して2つの論点があると思います。

1つは国籍法が改正された2012年7月4日をもって外国籍者は全員「外国人住民」というカテゴリーに入ったこと。この改正日本の外国籍者取り巻く状況を一転させました。同時に、日本国籍を有する人々がこの改正をどのくらい重大なことだと理解しているかも気になります。

この2012年7月4日の国籍法改正は、戦後の日本が、はっきりと帝国主義の負の歴史と決別すると決めた日だと感じています。なぜかといえば、朝鮮、韓国、台湾の国籍を持った旧植民地支配からの在日外国人はすべて、2012年のこの日をもって日本に来たことになったからです。帝国日本が行ったことを法制度上覆い隠すことで「忘却」か完成しました。、旧植民地地域からきた人とそうではない人たちを全部十把一絡げに外国人政策を決めよう、というのが2012年の方針だと思います。

一方、メリットとして映し出されているのが、例えば生活保護や国民年金など、あらゆる社会保障制度を「日本人」と一緒にしようということがあります。生活をしている人たちにとっては、一見、便利なように見えますが、実際はそうはいかないというのが現実です。

もう1つ、外国籍者の子どもの問題があります。日本では子どもに教育を受けさせることを憲法で義務と定めていますが、外国籍者の子どもの教育は、義務ではないのです。そのため、外国籍者の子どもは教育を受けるかどうかが親の判断で決まってしまう。よく、在日の家族について「家族の絆」が強いということを言われますね。「家族制度を守ってる」という言い方。それは裏を返せば、家族しか頼れない、家族を頼るしかなかった、ということの現われだと感じています。

こうした外国籍者の現実から見ても、家族の規範を押し付ける状況になればなるほど、「最終的に頼れるのは家族しかいない」という逆説的なことになっていくのが、憲法24条改変の問題だと思うのです。

現在約200万人以上いる外国籍者ですが、これからもっと増えるでしょう。そして、構成比率としては女性がやはり高い。これはケア労働に従事するために多いのです。日本の中ではマイノリティとされている人たちですが、24条が変われば彼女たちにも大きな影響があります。このように、いろんな意味をもつ24条改悪だということを、考えていきたいと思っています。

 

清水晶子さん:

LBGT関連政策の日本の現状は、地方自治体と国との二重体制が整いつつある状況。これは非常に大きな問題だと思っています。

たとえば渋谷区などに象徴されるような、地方自治体としてのLGBT支援の方向性というのは生まれつつありますが、地方自治体のやることなので、国の法律を変えることはできません。法的な効果には限界があるのに、促進ムードだけが生み出されているのです。

LGBT支援の中でも一番根本的な「雇用や生活の側面における差別の禁止」というのは、基本的には国の法律が変わらないと変わらない。にもかかわらず、地方自治体で促進ムードが押し出されていることで、国は動かなくてもいいという状況が生まれています。

要するに「外面だけをよくするだけのダイバーシティ政策」が、2020年のオリンピックを念頭に日本で進んでいるというわけです。

2020年のオリンピックでは、以前のソチオリンピックの教訓があります。LBGT政策が甘いと、国際社会、とくにアメリカ合衆国からの圧力が大きいだろうということ。ただ、トランプ大統領誕生以降どうなるかというところが、非常に大きな問題。これまでせめて外面をよくしなければ、と思う理由は外圧だったわけですが、一番大きなアメリカからの外圧が消えるかもしれないというのが、今の状況だと思います。

おそらく憲法24条を守ることとLBGT政策は直接的な関係はないだろうと思います。

ただ、24条の根幹にある発想や、それを嫌って変えたいといっている人たちの背後にある家族像と、LBGTの問題とは非常に大きな関係があると思うのです。

基本的には個人の性的な自己決定権、およびリプロダクティブ・ヘルス/ライツの要望に対しての脅威、というのが、24条改悪の動きの背後にあるということです。

2000年代に日本ではバックラッシュがあり、個人の自己決定権、リプロダクティブ・ヘルス/ライツが、非常に大きく攻撃された当時、安倍さんや安倍政権にかかわる人たちは、「こういうこと(個人の性的な自己決定)を進めていくと人間はバイセクシュアルになってしまう、男か女かわからなくなってしまう」と、はっきりとホモフォビックあるいはトランスフォビックな発言を繰り返していたのです。彼らがやろうとしていることの背後にはこういった発想があります。それが重要なところだと、私は思っています。

トランプ政権では、個人の性的自己決定権と、リプロダクティブ・ヘルス/ライツが大きなターゲットになるということは明らかです。Planned Parenthoodなど中絶などのケアをする団体への攻撃は女性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツへの攻撃でもあります。それと同時に、HIVをはじめとする性的感染症に関するさまざまなケアも提供しているそれらの団体への攻撃は、LBGTのコミュニティにもかかわってくる問題です。

もう1つ、トランスジェンダーの人権問題があります。ノースカロライナ州をはじめとしてアメリカでは現在、トランスジェンダーの人権が危機にさらされています。

そうした背景として非常に大きいのがFADAと呼ばれる法律で、First Amendment Defense Act(憲法修正第1条の擁護法案)というものです。俗称で「宗教の自由法案」といわれていて、この法律はすでに、さまざまな州で成立しています。

この法律には「婚姻は1人の男と1人の女の間で行われるべきであり、性的関係はそのような婚姻に留保されるべきであるという宗教的信念または道徳的確信に基づく行動を理由に、連邦政府が個人、企業あるいは団体を差別することを禁ずる」と書いてあります。要するに、個人、企業あるいは組織が信じている行動が一般的には差別的だと思われるものでも、彼らにとっての「宗教的信念」や「道徳的な確信」だといってしまえば、それを「差別」だとすることがアメリカ合衆国の連邦政府にもできない、というもの。

つまり、企業単位、自治体・州単位での差別的な規定が、この法を成立させた連邦では合法になってしまうということです。これによって女性や性的少数者の権利がおびやかされるという大きな懸念があります。

中でも緊急に懸念されているのが、雇用や医療、福祉において、「私はあなたの性的な関係を道徳的な信念に基づいて支持しないので医療は提供しない」とか「雇用しない」「保険を下ろさない」などということがアメリカにおいて差別ではなくなってしまうということ。今、非常に大きな問題になっています。

この背後にあるのは宗教という形はとっていますが、条文からもわかるように宗教は装いであって、明らかに道徳観。ある特定の家族制度をよしとする道徳観が背後にあります。

もちろん、アメリカ合衆国の家族制度と、戸籍制度をベースにした日本の家族制度は同じものではないですが、結果として、特に女性及び性的少数者のリプロダクティブ・ヘルス/ライツを縮小する方向に向かっていくこと、それから何よりも、差別撤廃、雇用や労働、福祉、教育あるいは指摘な空間に至るまでの、あらゆる差別撤廃に逆行しようとすること、この点で、日本の現在の政府の方向性とトランプが向かうといわれている方向は恐ろしいほど一致しています。むしろ日本が先を行っているともいえるでしょう。

今までは日本の方向性にはブレーキがかかっていました。なぜかといえば、共和党が議会の多数派を占めるなかで、オバマ大統領が大統領令を出して押さえていたからです。この大統領令をトランプはもう撤回すると言っています。そうなれば、共和党が多数派の議会の中で、方向性が一気に変わることが恐れられています。そうなると、おそらく日本の政府が行きたい方向へのブレーキがなくなり、むしろアクセルがかかるでしょう。

そこが24条改憲の動きが、トランプ政権で行われることに、かなり通じると思う点です。女性とセクシュアルマイノリティの両方のリプロダクティブ・ヘルス/ライツだけではなくて、雇用なども含めた権利を脅かす方向に向かっているのは間違いないと思っています。

たとえトランプ大統領にそれほど力がなかったとしても、リプロダクティブ・ヘルス/ライツについての宗教の自由法案や、オバマ大統領が食い止めていた共和党の議会の動きは、トランプとは無関係に進んで来ていたものです。だからこそ、おそらくトランプは進めるでしょう。安心はできません。むしろ非常に警戒したほうがいいと思っています。

(以上)

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