(メディア)宮崎日日新聞 社説「家庭教育支援法案」

宮崎日日新聞が5月26日の社説で「家庭教育支援法案」について書いています。

http://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_26050.html

多様性否定する危険がある

自民党は「家庭教育支援法案」の今国会提出を目指している。政府や地方自治体、学校、地域住民などが連携して家庭教育を支援する体制を整備するのが目的だが、家庭への公権力の介入を招くことが懸念される。法案について議論を尽くさなければならない。

法案は15条から成る。最も注目すべきは「基本理念」を定めた第2条で、家庭教育の在り方として「父母その他の保護者が子に生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努める」などとうたっている。

「国家に奉仕」狙いか

「目的」を定めた第1条では、現代の家庭を巡る環境の変化として「同一の世帯に属する家族の構成員の数が減少したこと、家族が共に過ごす時間が短くなったこと」などを挙げている。

一読しただけでは大きな問題はないような印象を受ける。しかし法案が作られた過程を振り返り安倍晋三首相ら法案を推進する自民党議員の発言を照らし合わせると、「伝統的」な家族と子育てを理想化する価値観と、それを押しつけようとする意図が見えてくる。

基本理念で望ましい家庭教育の形を示しているだけでも、家庭への介入と受け止める人がいるだろう。しかし原案はもっと露骨だった。保護者が「子に国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるようにする」ことが明記されていたが、批判を恐れたのか、最終案で削除されたのである。国家に奉仕する子どもを育てることこそ法案に込めた真の狙いではないか、という疑念をぬぐいきれない。

根拠のない思い込み

家族に関する立法は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚しなければならないことなどを定めた憲法24条との関連も重要である。自民党の憲法改正草案では、24条に「家族は、互いに助け合わなければならない」と追加されている。家庭教育支援法案が同じ思想から生まれていることは明らかだ。

日本の伝統的な家族や子育てが衰退して家族の絆が弱まったことが、さまざまな問題をもたらしているという危機感が伝わってくるが、その認識は誤りだ。

最近の研究によると、昔の庶民は子育てに手をかける余裕がなく、家庭で教育に力を入れるようになったのは高度成長期以降であり、現代はむしろ家族の絆が強い時代だというのが通説とされている。法案は「昔の家族は良かった」という根拠のない思い込みに基づいて作られているのではないか。

家族や子育ての在り方は極めて多様であり、これが正しいと決められないことが多い。唯一の「正しい家庭教育」があるかのような思想に基づく法案は、そうした多様性を否定し、子育ての自由を奪う危険性を秘めている。法案は、その重大性の割には内容が知られていない。自民党にはまず国民に内容を周知し、丁寧な説明をするよう求めたい。

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