(北海道新聞)「生と性」守る24条 家族を考える講演会

4月6日の北海道新聞に、3月に開かれた講演会の詳報が掲載されています。キャンペーン呼びかけ人の清末愛砂さんと、セクシュアルマイノリティの権利擁護活動や札幌市の同性パートナーシップ制度の導入を働きかけた鈴木賢さんの講演です。一部を書き起こしました。ミスなどあると思いますがご了承ください。
「もっと知りたい人へ」の欄で、当キャンペーンも紹介されました!

憲法はどこへ 「生と性」守る24条 家族を考える講演会

講演会「憲法はどこへー家族を考える」(北海道新聞社主催)が3月20日、札幌市中央区の道新プラザDO-BOXで開かれた。結婚や家族について書いた憲法24条をテーマに、ジェンダーや家族問題に詳しい清末愛砂室蘭工大准教授(憲法)と、性的少数者の権利を守る活動を続ける北大名誉教授の鈴木賢明大教授(比較法)が、それぞれ講演。その後、参加者との質疑応答があった。講演会の内容を報告する。

北海道新聞24条講演録

【第24条】婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

家族のかたち 改憲の的に
室工大准教授 清末愛砂氏

家族や婚姻について書いた憲法24条は、地味で護憲運動の中でも注目されてこなかったが、1950年代から保守的な改憲派の「ターゲット」の一つだった。
例えば自民党の前身である自由党の憲法調査会は54年に「日本国憲法改正要綱」を発表し、現憲法を「極端な個人主義」として、親子間の扶養義務を規定するよう主張した。自民党が2012年に発表した憲法改正草案では、前文と24条を大幅に改変している。
24条が大変嫌われているのはなぜか。彼らの理想的な国家のイメージを、完全に否定した条文だからだ。「革命的インパクト」を与えた条文だと言える。
大日本帝国では唯一の主権者は天皇であり、今で言う「国民」は天皇の家来の臣民だった。天皇を頂点とし、国が一つの大きな家族という「家族国家」だった。その基礎単位として家があり、戸主が権力を握る「家制度」があった。夫による妻の財産管理権など夫婦間の不平等も制度化されていた。家族内に支配体系を作って統制し国家の土台にするという発想だ。
24条の意義は、この「家制度の廃止」とするのが通説だ。だが80年代以降、もっと積極的に解釈する動きが生まれた。家制度が廃止されても家族内の不平等やジェンダー差別はなくならず、それに基づく暴力や性的役割分担を問題視する動きが広がった。女性を家庭内に囲い込み、性的従属を強いてきたとの指摘も強まった。
ドメスティックバイオレンス(DV)や児童虐待など、家族内の支配構造に基づいて生み出される暴力も少なくない。家族が大きな「壁」になって外から見えにくく、救済を求めたい人たちを阻んできた側面がある。その中で24条2項の「個人の尊厳」が着目され、憲法13条と合わせて、家族内のジェンダー差別や暴力から、一人一人を救い出すための根拠条文と考えられるようになった。
いま保守改憲派の一部はとりわけ「家族の助け合い」を言う。つい賛同したくなる言葉だが、私たちの首を絞めることになりかねない。彼らは24条が「家族を破壊させた」と言い、個人をベースにした考えや個人の尊厳を「利己主義につながる」と批判してきた。
自民党は改憲草案24条で「家族は、互いに助け合わなければならない」とした。そもそも「あるべき家族像」を憲法に規定することは、立憲主義の観点から見て非常に問題だ。家族間の助け合いというのは、「家族で問題を解決しろ」ということ。国による福祉や社会保障などを縮小し、家族内に押し込めることにつながるかもしれない。
実は24条には、もう一つの大きな意義がある。9条を大切だと思う人にはぜひ知ってほしい。24条は日本国憲法の基本原則のうち、「平和主義」を構成する重要な根拠条文でもある。24条は大日本帝国の軍事体制を支えた家制度を廃止することで、当時の軍事主義を否定したと言える。その意味で平和主義を掲げた9条と一体として考えてほしい。

きよすえ・あいさ
1972年、山口県出身。大阪大大学院助教などを経て2011年から現職。専門は家族法、憲法、ジェンダー法学。女性支援活動やアフガニスタン、パレスチナの難民支援にも関わる。市民運動「24条変えさせないキャンペーン」の呼びかけ人。

同性カップル 法で認めて
北大名誉教授 鈴木賢氏

性的マイノリティーは最近、LGBTとも呼ばれるが、日本の法律には一切出てこない。「同性愛」「性的指向」「性自認」という言葉も全く登場しない。法的には、「いない」存在になっている。世界では2001年にオランダで同性婚を認める法律が初めてできた。この動きは各国に広がり現在、同性婚を認める国は23カ国、同性パートナーシップ制の法律のみを持つ国は14カ国。先進7カ国(G7)で同性カップルの法的保護を一切していないのは日本だけだ。
同性カップルの法的保護を考える時、憲法24条は非常に大事な条文である。これを「同性婚禁止」あるいは「同性婚を認めるには24条の改正が必要」と解釈するのは間違っている。
この規定ができた時、同性婚を認める国はなかった。つまり、24条は同性婚を否定しているのではなく、想定していないと考えるのが妥当。「個人の尊厳」を踏まえれば、同性婚を認める方が24条に合致する。さらに13条や14条(法の下の平等)を考えれば、現憲法下でも法律で同性婚を認めることは十分可能だと考える。
日本では15年に渋谷区と世田谷区で同性パートナーシップ制が始まった。導入を決めた札幌市は6番目の自治体となり、政令指定都市では初。同性婚と一言でいっても「事実婚としての保護を同性カップルにも拡大する」「従来の婚姻を同性にも拡大する」など、さまざまなレベルがある。私は、パートナーシップ制は同性婚への第一歩であると思っている。そういう意味で、札幌市は大きな一歩を踏み出したと言える。
ほとんど法的効力はなく、象徴的な制度にすぎないが、それより社会的、政治的なインパクトが大きいと思っている。同性カップルの可視化が進み、このテーマを多くの人が議論し、関心を持つきっかけになる。札幌の同性パートナーシップ制の特徴は二つある。一つは市民が要望してできた。もう一つは同性だけでなく、性同一性障害の異性カップルも登録できる点だ。
性的マイノリティーは、どのくらいいるのか。これを調べるのは非常に難しい。調査によって、まちまちな数字が出る。聞き方によっても変わるし、周囲に知られることを恐れ、正直に答えられないという場合もある。最近、龍谷大学(京都)が学生と教職員に行った調査では「自分は性的マイノリティーに該当する」と回答した人は26%。性的マイノリティーが身近で当たり前の存在だと示す一つの証拠だといえる。
同性間の婚姻を認めることは、同性愛者をまっとうな人間として承認するという意味につながる。たとえ法律ができても婚姻しない人は当然いる。今の問題は選びたくても、選べない点にある。法的婚姻からの排除は国による差別だ。異常でも、病気でもない、社会の構成員であると法律で認める。そうしたからといって差別や偏見はすぐにはなくならないかもしれない。だが、当事者たちのスティグマ(負の印象)をなくしていくきっかけになる。

すずき・けん
1960年、美唄市出身。北大大学院法学研究科教授を経て、2015年から現職。専門は比較法、中国法。ゲイ当事者として、性的少数者の権利を守る活動を行っている。パートナーシップ制導入を札幌市に働きかけてきた市民団体の呼びかけ人代表。

<質疑応答>

---小学校で2018年度から、中学で19年度から道徳が「教科」になる。その中で、家族などについてどう教えたらいいのか。
鈴木 人権教育をすることだと思う。一人一人が大切にされるべき個人であり、「個人の尊厳を守る社会をつくる必要がある」ということを、いろんな事例を通して教えるべきだ。国家のイデオロギーを押し付けるような場には、してほしくない。

---育児や介護を家族の自助努力に求めることによって、国は、社会保障など公的支援を減らそうとしているのではないか。
清末 政府は今、すでに育児や介護の「自助努力」を要請している。「家族の助け合い」を強調するなら、その流れはもっと進むだろう。(国による福祉サービスを抑える)「新自由主義」的な安倍政権の政策と、「家族の助け合い」は呼応する。自助努力には当然、限界がある。新自由主義の発想に基づく規制緩和で介護ビジネスは乱立しており、お金のある人はビジネスを利用すれば良いが、お金のない人は大変厳しい状況に追い込まれる。

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