(AERA)結婚しない選択はなし? 「官製婚活」でお上が“内政干渉”

AERAの3月20日号に、官製婚活の記事が出ています。
「婚活」に税金が投入されているという異常事態…。特定の生き方や家族像を提示し、誘導する動きに、改めて怒りがわいてきます。自民党が成立をもくろむ「家庭教育支援法」や24条改悪など、弁護士の太田啓子さん、キャンペーン呼びかけ人の山口智美さんのコメントもあります。

https://dot.asahi.com/aera/2017031700021.html?page=1

結婚しない選択はなし? 「官製婚活」でお上が“内政干渉”

春闘やら相場やらと政府主導祭り真っ盛りのニッポン。今度は少子化対策のため、我々の勤め先で「官製婚活」をやり始めたという。

「んあああああ」

教室に赤ちゃんの泣き声が響き渡る。男女が慣れない手つきで一生懸命あやす様子がほほ笑ましい。しかし彼らは夫婦ではない。ここは婚活会場なのだ。

2月、群馬県下仁田町で廃校を利用した婚活イベントが開かれた。その名も「ガッコン」。内容ももちろん授業仕立てだ。入学式で自己紹介をし、1限目のコミュニケーション講座で緊張をほぐしたら、2限目は冒頭のように赤ちゃんと触れ合う。男女28人の参加者に対し、赤ちゃんは約10人。男女が2、3人ずつ輪になって交互に抱っこしていく。

「赤ちゃんと接することで女性は母性本能がくすぐられるし、男性はそんな女性の姿にグッとくるでしょう?」

市の担当者は、「保健」と名付けられた授業の狙いをこう語る。イベントは下仁田町と地元の商工会青年部との共同企画だ。目的は、地域振興、そして少子化を食い止め「後継ぎを確保する」ことだという。その後もこんにゃくを手作りする「家庭科」などを行い、カップルになった8人だけが卒業証書を受け取った。

●東京五輪までに結婚

政府からの交付金を使って地方自治体が行う、いわゆる「官製婚活」。その現場で今、大きな変化が起きている。一つは小池百合子都知事率いる東京都の動きだ。

今月、千代田区で結婚応援イベント「TOKYO縁結日2017」を開催。会場には結婚相談所はもちろん、ネイルやメイクなど15の団体のブースが並び、来場者数は約3千人の盛況ぶり。主催者である小池都知事のあいさつにも熱がこもる。

「2020年の東京オリンピック・パラリンピックを誰と一緒に見ますか? こういうイメージトレーニングが重要です」

五輪を婚活に利用するのかと驚いたが、都がこのようなイベントを行うのは初めて。議員時代に「婚活・街コン推進議員連盟」を立ち上げ、会長を務めた小池都知事の肝いりだ。これまで民業圧迫などを理由に結婚支援を行わなかったといわれる都だが、こうなると「1億総婚活社会」かと言いたくなる。

結婚支援に初めて国の予算がついたのは13年。以来、結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援を目指す「地域少子化対策重点推進交付金」として都道府県の婚活を支えてきた。高知県が47都道府県の情報をもとに調査したところ、これまでに6668組以上が成婚しているという(16年8月末時点)。16年度は40億円の補正予算が閣議決定された。

●職場の縁結びさん

さらなる変化も起きている。“お上”が民間企業の中でも婚活を進めようとしているのだ。地方イベントに女性参加者が集まらないことなどが背景にあるよう。昨年末、企業による結婚支援について内閣府の検討会が開かれ、その席上、先進事例として紹介されたのが福井県庁の取り組みだ。200社の企業と連携し、進めているという。

概要はこうだ。「職場の縁結びさん」と呼ばれる人を置き、独身社員に他企業との合コンをセッティングしたり、婚活イベントへの参加呼びかけをする。キャッチコピーは“職場のめいわくありがた縁結び”で、最初は迷惑でも、必ず良い結果に結びつき感謝することになりますよ、という意味らしい。県内183社が登録する専用サイトには、独身社員のPRコメントも掲載している。

それだけではない。高知県では県庁が“少子化対策を県民運動へ”と謳い、「高知家の出会い・結婚・子育て応援団」を創設。結婚支援窓口を開設し、婚活イベントのパンフレットを独身社員の目につく場所に置いて配布しているという。

これらの動きに警鐘を鳴らすのは弁護士の太田啓子さんだ。

「未婚や少子化問題を解決するには、安定した収入や残業を減らすなどの雇用環境の改善、そして保育園整備が先決のはずです。結婚を望まない人やLGBTなど、多様な生き方を認めることにも逆行しています」

●ライフデザインに注意

一方で企業内での働きかけについて、福井県の担当者は「普段のコミュニケーションの流れの中で声がけをしているので、プレッシャーはないはずです。批判的な意見も出ていませんよ」。だが企業が社員の結婚支援をするとプライバシーを侵害する可能性もあり、手法を問わず強制的と捉えられ得るとの懸念は内閣府検討会にも数多く寄せられていたはず。同検討会の最終的な提言にも十分に配慮するよう書かれてはいるものの、

「皆さん前向きに捉えているので、パワハラの懸念をあまり強調しすぎても……」

とこの担当者はあまり意に介さない様子だ。企業へのヒアリングも行っておらず、現状把握も不十分に見える。

さらにこんな見方もある。モンタナ州立大学社会学・人類学部准教授の山口智美さんは、政府や自治体が今後は「ライフデザイン」にまで力を入れてくる、と予想しているのだ。山口さんはこう警告する。

「セミナーなどで特定の年齢までに結婚すべきと説いたり、国や自治体が理想とする価値観や人生プランを盛り込んでくるでしょう。それとは分かりづらい方法で、行政が個人の生活意識にまで介入することに強い懸念を抱いています」

●学校でも家庭教育?

学びというかたちであれば、学生に結婚や出産意識の啓発をすることもできる。実際に高校や大学でライフデザインセミナーを実施している学校もある。前出の婚活・街コン推進議連で事務局長を務める石崎徹衆院議員は「就活の後は婚活」というトレンドをつくっていきたいという。

「価値観を押し付けるのではなく、医学的な情報を踏まえた判断をしてもらえるよう、促していきたいと思っています」(石崎議員)

一つの例としてあげたのは、文部科学省が発行する高校生用の補助資料。22歳を妊娠しやすさのピークとしたグラフを掲載し、ライフプランを考えることの重要性を訴えているのだ。

この動きをさらに加速させ、結婚や家族のかたちを変えかねないのは、自民党が今国会で提出を目指す「家庭教育支援法案」と、その先に待ち受ける、個人の尊厳と男女平等を定めた憲法24条の改正だ。24条の改正案では「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し」の「のみ」が削除される。また、「家族は、互いに助け合わなければならない」という条項が新設されていることについて、子育てや社会保障費削減の論理的根拠にしたいのではと指摘する識者も多い。

家庭教育支援法は、家庭での子どもの教育を支援するために、国や自治体、地域住民などの役割を法律で定めるものだが、前出の山口さんは「自治体や地域住民が連携して家庭に介入し、戦時中の『隣組』のような監視体制にならないか心配」と指摘する。また学校や保育所が家庭教育の拠点として新たに加わることも挙げ、「親になるための学びと称して、子どもたちに特定の家族観やジェンダー観が押し付けられる可能性があります」とも話す。

今回の取材で出会った「婚活」に携わる多くの人が、結婚を選択しない人や、多様な生き方を許容する世界に対して「意識改革が必要」と言い、「婚活」と「少子化対策」を同義で語る姿が気になった。政府の「結婚から子育てまで切れ目ない支援」が、個人の人生の選択に介入してはいないか。これからは、いつも自分の心に問いかけたほうが良さそうだ。

(編集部・竹下郁子)

※AERA 2017年3月20日号

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